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2002/06/11 事務局 井上喜光
- 第3回音楽会(2002.6.2)を終えて -
先日の音楽会はVOCらしいユニークさがたくさん見られました。
先ずは長尾先生のミニ講座ですが、古代ギリシャ語と詩の関係など初めて聞く話しが多くいろいろ面白く勉強になりました。じっくり聞きたかったのですがばたばたしていたので、先生が用意されたレジュメを後で読みました。奥が深くてますます面白い。レジュメに入っていないことも話されたでしょうから、いずれ先生の大学の講座を聴講してみたいものです。このような講義を聞けるのもVOCならではです。
本番導入部の映像はちらしのデザインと同じでした。冥界へ通じる真っ黒な入口にオルフェオとエウリディーチェの名前が浮かんでいます。入口の周囲はギリシャ風?の装飾で飾られています。良く見ると下の部分にはVivava Opera Companyとあります。黒と金色の組合わせが荘厳な印象を与えます。このデザインはMr.大草の作品と聞きました。この分野のご専門かと思ったらそうではないらしい。このデザインですが、プログラムの方は予算の関係でカラー印刷でなくて勿体なかった。
ステージのスクリーンの映像が歌劇の進行に合わせて替わります。はじめは墓地の情景で、オルフェオが冥界の中に入るころからアブストラクトになり観衆の想像力を刺激します。入口にいる番人たちがオルフェオにNO!と拒む場面では、スクリーンでも大小さまざまなNO!が飛び交いとても効果的でした。このコンピュータによる映像はMrs.大草が創作されたのですが、オペラ演出の大道具として可能性が大きいと思いました。今回は借り物ですが、VOCでお金を貯めて自前のプロジェクターを手に入れたいものです。
スクリーンには歌詞の日本語訳が現れます。この対訳を合唱メンバーは前もっていただいたのですが、なんとA3版裏表で3枚ぎっしりですよ!古いイタリア語で大変だったようで、この翻訳には大草さんほかの方々の大きな労力がつぎ込まれています。日本語訳が無ければ聴衆の受ける感動は半減したでしょう。商業ベースのオペラですらこのサービスを提供できていないところがあるというのにVOCはすでにやったのです。会場2階奥のブースで大草さんがパソコンを操作したのですが、歌を楽しむ余裕が無かったかも知れませんね。ご苦労さまでした。
オルフェオと再会した喜びもつかの間にエウリディーチェのこころに疑念が生まれ、見る見るうちに黒い疑いがこころを覆い尽くしていきます。事情を語ることができず苦しむオルフェオ。この二人の切迫したやりとりには対訳を読んだときから心が締め付けられるようでした。野間さんと津山さんがここをどのように歌われたか、皆さん良くご存知の通りです。逆瀬川での練習、リハーサル、ゲネプロと何度も聴く機会を得たのは個人的に本当にラッキーでした。
昔この神話を読んだとき子供心に思ったことは、エウリディーチェもオルフェオも辛抱が足りない、それくらい我慢できるだろうに、でした。年齢を重ね人間についてすこし理解が進んだいま、エウリディーチェもオルフェオも我慢できなかった、それはそうだろうよ、です。愛する人を再び永遠に失ったオルフェオが絶望の中で歌う哀切なアリアには会場の誰もが心を打たれたでしょう。長調のアリアでした。短調だと情念に訴えますが、長調で歌われると純粋な結晶のような悲しみが伝わってきます。
そこに救いの女神アモーレが現れます。田中さんはなかやしきさんのおっしゃる通り、凛として気高いアモーレでした。野間さん、津山さん、田中さん、みなさん、どのようしたらあのように役になりきることができるのでしょう。アマチュアの感嘆するところです。長尾先生のミニ講座の中で、このような救いの神のことを機械仕掛けの神というとのお話があって大いに愉快に思ったのですが、ここはハッピーエンドで救われました。辛いことは現実だけで十分です。
今回のオペラ上演は質的に第1級品だった(コロスの男声部など部分的な瑕疵はありますが)と言えるのではないでしょうか。ところで、VOCは音楽会毎に決算報告をするので台所事情はガラス張りなのですが、このオペラ公演の予算がいくらだったと思いますか?驚くなかれ、たかだか100万円なのです。どうしてそんな手品みたいなことができるのか?これがVOCのVOCたる所以の最たるものです。その秘密はVOCボランティアパワーにあります。
もし、この公演に必要な仕事をこの質的レベルで商業ベースで外注したら経費はどれだけ掛かったか見当もつきません。いろいろ教えてくださったミニ講座、印象的なスクリーン映像、歌詞翻訳、充実したプログラム、オーケストラ指揮、舞台演出、歌い手たち、歌い手が纏ったあの織物、オルフェオの大切な竪琴、オケ用楽譜、練習ピアノの弾き手、などなど。オーケストラの方々も破格のペイで引き受けていただいています。歌い手のみなさんは音楽家会員ということで収支差金が出れば支援金を差し上げるのですが、出なければ差し上げられないこともあります。プラスして、資金集めのTシャツの手配、寄付をしてくださった方、など、みんな損得抜きの参加です。
この催しが実現するのに、実に多くの方々が持てる才能・技能・アイデア・時間・善意をVOCに惜しみなく与えました。たくさんの人の心に宿っているボランティアスピリットを活かせば不可能が可能になることをVOCは実証したと言って良いでしょう。