![]() |
|||||||

なかなか原稿が書けない時は、たいてい滅入っているとき??か、非常に忙しいかのどちらかのようだ。かくして半年分の出来事を一挙に書く羽目になってしまう。
フランスには年に1回、大体2月の最初頃に “ヴィクトワール・ ドゥ ・ラ・ ミュジーク” という非常にお祭り的なクラッシック音楽テレビ番組がある。いろんなカテゴリーがあって、前年の“○○賞“ を勝手に決めてしまうのだ。新星フランス人演奏家器楽賞&声楽賞、ベストアンサンブル賞、器楽演奏家賞などなど、さらには DVD 賞なんてのもあって、全部で10部門ほど。その番組にどうした経緯か、この私が ”新星外国人演奏家賞”というのにノミネートされた。まずカンヌでオーディション(1月23日)があるらしく、それで選ばれれば生放送となる本番の番組(2月1日放映)出演となるそうだ。カンヌでの会場は、何とカンヌ映画祭のときに使われるのと同じところ。スターたちのための赤絨緞はさすがにないものの、映画ファンでなくてもドキドキする。ノミネートの通達(1月10日過ぎ!)後すぐに本格的準備に取り掛かるが、アリアを2曲だけとは言え、準備できる時間は少なく、オケの編成の都合上、選択できる曲も非常に限られる。オケの編成の詳細などわからずに選曲するものだから、3度目の提案にしてやっと OK がでる(近所の楽譜屋のおじさんには、いっぱいオペラのオケスコアを引っ張り出してきてもらって、ずいぶんお世話になった)。ようやく曲が決まっても、箪笥の奥から引っ張り出してきたような曲もあって、初めての経験にわけもわからず非常に焦る。
さて、カンヌである。久々にカルチャーショックを受けた。1月だというのに、さんさんと輝く太陽。パーム椰子の並木に縁取られた浜辺の正面に立ち並ぶ、白亜の超!超!高級ホテルとブランドショップ。海岸沿いの遊歩道は、あまり見かけない犬(巨大なアフガンハウンドとか)を連れた比較的若めな方々(お散歩係さんであろう)と、比較的年齢層が高めの方々。そう、ここは彼のコートダジュールであった!
空き時間に散歩をするにも、あまりに御呼びでない店ばかりが並ぶ通りでは少々退屈で、結局持ってきていたジョギングシューズに履き替え、海岸沿いをジョギングすることにした。幸いさすがのカンヌでもジョガーは私だけではなかったので、肩身の狭い思いをすることもなく気持ちよく夕日を満喫した。
コートダジュール生活も3日目を迎えると、やっぱりふるさとの味が恋しくなる。というわけで、天然の(野生の?)勘に頼って手ごろそうなアジアンレストランを探す。探し当てたのはわりと大きな中華料理屋さんで、お客さんも比較的入っている。よし、と迷わずここにする。
ふと気がつくと、ひとつテーブルを挟んだ向こう側に日本人らしき男の人が一人でお昼ご飯を食べている様子。ひそかに観察を続けると、日本語のガイドブックのようなものを読んでいる様子なので、”観光でいらしたのですか ? “と会話がはじまる。思うにこれが外国生活&海外旅行のいいところで、知らない人とでもわりと気さくに話せるような気がする。聞くところによると彼は数ヶ月ほど前からカンヌ在住で、海岸沿いにある超高級ホテルのひとつの中の、これまた超高級星つきレストランでソムリエをされているらしい。私にもソムリエールの免許を持っている親友が日本にいるので、いろいろ話を聞いていると実に興味深い。まだ私よりも若いのに、そのレストランのシェフ・ソムリエさんがバカンス休暇の時などは、彼が代わりにその大役をするらしい! 日本人初の M.O.F. ( M eilleur O uvrier de F rance 、フランス最高職人の称号)取得が夢だそうだ。 ”もしかして、熱血大陸とかに出てはりませんでしたか ? “ と、思わず血迷ったことを質問してしまう。 ”ほら、日本で日曜日の夜にやっていた海外で頑張る日本人をルポルタージュした番組です!”、“・・・?それってもしかして、情熱大陸のことですか?”、“へっ??”。 残念ながらまだ取材の予定はないそうですが、いやはやすごいな~日本人。
肝心のオーディションは、結局2位どまり。“外国人部門”は器楽・声楽ごっちゃ混ぜなので、どういう風に審査するんだろうね~?と思いながらも、とっても親切だったアルゼンチン出身のピアニストさんにまずは乾杯。その後の生放送の本番組では、ノミネートされた人の演奏もほんのチラッ(10秒ほど)と紹介されたのだけれど、友人知人達から“見たよ ! 、驚き!、おめでとう!”電話やメールが沢山届いたのにはビックリ。みんな見てるものなのね・・・。私も家でのんびり見ていたのだけど、たった10秒間自分の歌唱が映っただけでも、とってもとっても緊張してしまった。選ばれていたらどうなっていたことか!
普段のコンサートとはひと味もふた味も違った ,”The ショウ・ビジネス ” の雰囲気の中、初めての経験続きで心身ともにかなり疲れてしまったけれど、もう将来こんな経験をすることもないだろうなぁ、と今になって思い出してみれば、とってもおもしろい経験だったかなと懐かしい。
2006年6月8日 パリにて

カンヌの隣町の海岸。カンヌはもっともっと華やか&豪華(が、写真撮るの忘れました)。

ホテルの部屋に入ってみてビックリ! 主催者から女性演奏家には特大花束が、男性には高級シャンパンが準備されていた !

会場横のカンヌ港にて。パリの会社社長のバトーの甲板で、お昼からキリッと冷えたワイン片手に楽しそう。写真を撮らせてもらうだけだったのに、とっても気さくに船内を案内してくださって、さらにロゼまでご馳走になった!
