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 パリは日曜日が素晴らしい。いつもの喧騒が嘘のように静まり返り、さらに今日は朝から雨がしとしとと降って、すべての植物が生命力を取り戻しているよう。ひたすら晴れ続けた一週間で、町は自動車の排気ガスと砂埃にまみれ、乾燥しきった空気は容赦なかった。薄暗く常に霧雨が降っているような冬とは違って、夏のパリは本来天気が良く、さらっとした空気が爽快な季節だけど、あまりに空気が乾燥すると、私の体も干乾びてしまいそう。さらに近年は異常気象で“猛暑”続きだし、なかなか“非常に快適”なヨーロッパの夏のイメージも変わりつつある ? かも知れない。

バロック音楽を勉強していたパリ音楽院もめでたく卒業、春先から続いていた演奏会群もひと段楽して、ちょっと休暇を取ろうと思っていたところに、京芸時代からの友人のメールが舞い込んだ。

京都の北山でロシアンカフェ(ロシア風カフェ)をやっている彼女は、 6 月半ばにロシアに民芸品などを買い付けに行った後、パリに寄りたいので泊めてという。ちょうどのんびりしようと思っていた時期だったので“勿論 OK !“という返事を書いた後、ちょっと考えた。“ロシアかぁ、面白そうだな~。すでに何度かロシア経験のある彼女と行くのは心強いし、こんな事でもなければなかなか行けない国かな・・・”、と言うことでいきなり思い立ち、早速旅行の準備を始めた。わりと一人旅や海外経験豊富な私といえど、ロシアは言葉一つとっても、まったく勝手のわからない国である。パリの古本屋さんで“地球の歩き方”を購入、下調べを始めたのだが、ソ連時代から比べれば格段に訪れ易くなったらしいが、なかなかどうして一筋縄では行かない国である。それでも行きたい思い一心で、すべてギリギリながらもなんだかんだ頑張って、ようやくビザやら、ホテルやら、航空券の手配を整える。さあ、いざ出発。

順調にパリのド・ゴールを出発、 3 時間半の機内で”地球の歩き方“とフランスの旅行ガイドブック“ルタール”をひたすら読みふける。このルタールというガイド、こちらではかなりメジャーなシリーズのひとつで、フランス版“地球の歩き方”とでも言うか、その内容をさらに文化的に充実させたようなもの。フランス人的な、かなり個性的(個人的)なコメントが笑いを誘う。サンクト・ペテルスブルクでは彼の有名なエルミタージュ美術館、モスクワではロシア絵画の殿堂トレチャコフ美術館で、ルタール片手にのんびり名画を堪能した。

さて今回のロシア旅行、サンクト・ペテルスブルクに 2 泊、モスクワに 3 泊というのに加え、夜行列車で 1 泊という 6 泊 7 日の大旅行。ルンルンで独りモスクワ空港に降り立った私は、気長に入国審査の長蛇の列に並ぶ。ここから国内線に乗り換えて、サンクト・ペテルスブルクで友人と待ち合わせ、旅は始まるのだ。ようやく私の審査の番になったのはいいのだが、なんだか様子が違う。殺風景な審査場の雰囲気も手伝って、嫌~な予感が頭をよぎる。予感的中、なんと私のビザの記載に間違いがあったのだ。そんなガイドに載っているような典型的問題例なんて自分には無いであろう、と信じきっているノウテンキな日本人は、哀れ、迫力満点のロシア女性に別室に連れられて、ひたすら待たされることになる。いったい現在どういう手続きがなされているのか、どれくらい待たされるのか(乗り換えの時間が迫るのに!)、最悪、強制送還かなどと不安に苛まれ、とりえず事務的な会話を試みようと“すみません・・・、乗り換えの飛行機があるんですけど大丈夫でしょうか ? ”と勇気を振り絞る。“ Sit Down!!!  座っておけ !!! ”と、すごい剣幕の大声で怒鳴られ(犬の気持ち?!)、なすすべも無く途方にくれる。周りを見回すとインド人風の男の人もなにやら同様に待たされている様子。いったい何時から待っているのかと訪ねると、なんと朝の 10 時半からだという。私がすでに 1 時間以上待っている状況で夕方の 5 時だったから、彼らはゆうに 6 時間待っているのだ。こりゃ絶望的だ、と真っ青になる私を見ておじさん二人組みは“まぁ、わしらの隣に座ってのんびり待とうや”なんて調子。ペテルスブルクのホテルで待っている友人にどうやって連絡したものか、と焦る私はのんびり座ってなんかいられない。と、そうこうするうちに、あぁ神様のひと声、例の怖~いお姉さんが私を手招きする。びくびくしながら行ってみると、なんとわたしの没収されたパスポートに新しいビザがばっちり張られている。実は空港でビザの再発行手続きをしてくれていたのだ。それならそうと最初から一声説明してくれれば、こんなに不安になることもなかったのに・・・。かくして 2 時間近く不安にさいなまれたまま空港で待った後、見事乗り継ぎの飛行機には乗り遅れ、あらかじめ連絡を入れたにも拘らず予定していた空港への迎えの人影も見えず、結局またまたペテルスブルクの空港で、客引きのタクシーのおじさんたちの好奇の視線にさらされながら 1 時間半ほど待ったあげく、それでもようやく予定より 5 時間遅れの真夜中 12 時前に無事?!ホテルに到着した。 

こんなロシア旅行のスタートだったから、この先どうなるのか内心かなり不安だったのだけど、ロシア語が少し出来る頼もしい友人と、白夜の季節(夜中 1 時ごろでもまだうっすら明るい)というのも手伝って、仕事抜きの自由旅行はゆっくり観光・買い物を楽しめた。

なんとマリンスキー劇場ではラッキーなことにゲルギエフの“ワルキューレ”を観ることが出来て、感動! それでも旅の白眉はやはり、オルセー美術館顔負けのフランス近代絵画コレクションを誇るエルミタージュ美術館と、モスクワから 1 日エクスカーションで行った、ペトロヴァレッツにある修道院の中のロシア正教会での礼拝。その礼拝の様子は透き通るような聖歌がやさしく響く中、何ともいえず感動的で、全く異空間な素晴らしいものでした。人間と宗教との関わりについて深く考えさせられた体験でもありました。それから友人に引っ付いて行った、ロシア最大といわれるモスクワの蚤の市も大いに満喫。広い敷地の中に所狭しと並ぶ露店には民芸品のマトリョ-シカや殺菌作用があるという白樺の木の皮の小箱、 1980 年のモスクワオリンピックの小物や、はたまた高級シルクペルシャ絨毯( 1000 だよ、と値段を言われてむっちゃ安いなあ( 1000 ロシアンルーブルで 5000 円弱)と思ったら、実は 1000 ドル!( 12 万円くらい?)だった。そりゃそうだ!)コーナーもあったり、串刺しのお肉がジュウジュウ音をたてて焼ける、その香ばしい匂いが辺りにはほのかに漂い、実に実にピトレスクな経験だった。

そんな調子で、あっという間に楽しかったロシアでの一週間が過ぎ、旧友たちと別れを惜しみながらロシアを後にする。モスクワよりずいぶんヒンヤリ!のパリの気候にビックリしつつも、お土産の袋を開ける弾む心はまだロシアモードだったりする。スパシーバ!!

                        6月25日 パリにて

▲エルミタージュ美術館外観

▲美術館横に小熊!出現。

▲ペトロヴァレッツ、夏の宮殿外観。噴水と緑のアプローチが美しい。

▲ピョートル大帝のいたずらの噴水。ある石を踏んづけると・・・

▲こうなる。

▲仮装のロシア美人。彼に100枚!ほど写真を撮ってもらっていた。

▲皇帝の森の音楽隊。

▲マリンスキー劇場。もうじきゲルギエフ登場!

▲サンクト・ペテルスブルクは北のヴェニスと呼ばれている。

▲モスクワへの夜行列車、赤い矢号。朝ごはんもついていて、快適でした。

▲赤の広場は立ち入り禁止。

▲青空の中に聳え立つロシア教会堂。


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