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■大森先生の印象は?

関西には無いタイプの癒し系の方。人間的に、人の気持ちの裏を汲んで下さる方です。歌を歌っていくうえで、自分のなかの方向性というか、やはりこれでいい、と後押ししてくれる方は大事ですが、大森先生はそういう方です。

■では畑先生は?

この前、クリスマスメサイヤの打ち上げでカラオケへ行った時に、先生の「TSUNAMI」を初めて聞きました。日本語の響きと、あの方の声の甘さが本当に合っていて、感動しました。

■声を守るためにしていることはありますか?

バランスの良い食事は心掛けていますが。あとは、登山や走ること、散歩することは好きです。

■声楽を学ぶきっかけとなったのは?

一番の影響は、父が洋楽を好きだったことだと思います。幼稚園時代からヨハン・シュトラウスなどを聞いていました。今でも、気づかないうちに子供の頃に聞いた耳で音楽をきいていたということがあります。

受験のための音楽を本格的にやりだしたのは高校一年の時です。音大を声楽で受験しました。近所のお姉さんが声楽をしていて、最初に聴いたのが「オンブラマイフ」でした。『歌って素敵だな』と思えたことが、自分も声楽をやろうと思ったきっかけです。
また、「のばら」という映画で、ウィーン少年合唱団のボーイソプラノを聴いた時、刺激がありました。

4人に1人の高倍率でしたが、大学は大阪音大しか考えませんでした。卒業して、東京音大のオペラコースで更に学びました。その時、ギリシャ人の先生にフランス歌曲の手ほどきを受け、好きになりました。今ではフランス歌曲が私のライフワークだと思っています。日本人はどちらかというとドイツ系の音楽に惹かれますね。でも、フランス音楽は、音が繊細、というか、表情があります。多彩でもあります。歌うのと喋るのではニュアンスはまた違います。フランス物はむしろ、ピアノにも主張があるので難しいです。歌う以上に伴奏がむずかしいのがフランス物かもしれません。

世の中へ自分をプレゼンスしたのは、ヨハン・シュトラウスの「こうもり」で、アデーレ役でデビューしました。大阪に戻っては、「フィガロの結婚」の伯爵婦人でデビューし、それ以来、伯爵婦人は様々な機会に歌わせて貰っています。

■津山さんは自分の声がお好きですか?

テクニック的にも役的にも、もう少し望むところはありますが、でも今の声は、安定していて、好きです。最初は軽めのソプラノでしたが、今は、重めの奥様の声もいいといわれるようになりました。年齢とともに、役柄も声も変わってきていると思います。

■歌において苦労されたこと、辛かったことは?

理想の声や思うところの声があっても、出してみるとそのイメージ通りに声が出なかったりするなど、大学時代から最近までも、ずっともがきはあります。これから先もあるでしょう。でもだから面白いのかも。簡単に操れてしまったら、きっと面白くないでしょう。でもいつまでも同じ状態なのではなく、学習して知恵がつくので、自分が落ちていく流れがだんだんわかってくるようになり、落ちそうなときに、そこに行く前に引き戻せるようにもなります。

また、パフォーマンスするのは自分独りでも、そこまでいくのに、個人のもがきと、対象から来るもがきとがあります。自身のレベルは試行錯誤ですが、先生からのレッスンで、自分とは違う考えを言われることがあります。そういう時、自分の気持ちを常にニュートラルにしているときは、素直に受け入れることができます。それは言い換えれば、心が健康であることです。受け入れることが出来ず、独りよがりのものになってしまうことは一番怖いことです。心の健康と身体の健康は影響しあっていると思います。

■身体はがっちりしていた方が声が出るのでしょうか?

太っているかは関係はないと思いますが、しっかりした身体をつくることは大事です。余りに薄っぺらなのではきっと声も出ません。やはり身体が支えとなりますから。また、筋肉が出来ていても、それを操れなくては歌えません。

■どのような人たちに歌を教えているのですか?

週一回、同志社女子大学に教えに行きます。また、堺女子短期大学では、西洋の音楽の流れを講義しています。奇抜な格好の子たちがいて、いつも成績などにクレームをつけられますね。また、自宅では十人ほどに、個人的にレッスンをしています。歌に熱心で、勉強したい意欲の強い人が多いです。そういう子が、ちょっとしたヒントで変わっていく姿を見ることは嬉しいことでもあります。

■人を教えることについて、責任が重いと感じたことはありませんか?

責任はありますが、教えるというよりは、私自身が体験してきたこと、培ってきたことを伝える、という感じです。だから自分自身が「先生」であるとは思いません。なにかヒントを伝えるような感じです。また、逆に反面教師で、レッスンしながらむしろ自分が教えられているときがあります。レッスン料は今日は要らない、という日もあるくらいです。人と勉強することは、自分を気づかせてくれることだと感じます。

■歌は一日にどれくらい歌うのでしょうか?

三十分の時もあれば二時間以上など、日によって、スケジュールによってまちまちです。声の管理については、つい二、三年前くらいまでは悩んだことはありました。でも過敏にケアし過ぎるのも良くないのではないでしょうか。ただ、風邪をひいた時や、歌い過ぎた時は気をつけてケアをします。演奏会前の時期も、適度に調整しています。

■ご趣味は?

美術館めぐりが昔から好きですね。西洋美術、特に英国のラファエロ前派の絵は、女性の姿がエロティックで好きです。男の人がこういう女の人を好きなんだなあ、と客観的に観たりします。今、ラベルの「カディッシュ」を歌うためにヘブライ語のレッスンを受けているんです。絵もそうですが、歌を通じて色々の国を旅行させてもらっている気持ちになります。色々の国を、ある部分で知ることが出来ていると思います。

今は、歌わせて頂ける時を、一つ一つのステージを、色々の人との出会いを大切にしていきたいと思っています。一年先に、こういう状態が続いているかは誰も分からないことです。また、パフォーマンスだけでなく、人とのつながりが大事です。歌とは、心を伝えることだから。最近そういうことにも目が行くようになりました。

■歌う時に余裕が出てきたということでしょうか?畑先生も、感情を込め過ぎても伝わらなかったりするんだ、とおっしゃっていました。

100%出すと逆に良くないかもですが、でもだからと言って真剣でない、とか、目いっぱいやらない、というのとは違います。今の自分がきちんと伝わる歌を歌おうと思っています。すべてを受け入れて貰おうとは思いませんが、全く聞いた曲が無くても、なんだかキレイな曲だったね、などといってもらえると嬉しいし、歌い手としてやはり、やり甲斐を感じます。逆に、歌で癒してあげる、と言うことは、私にとってはおこがましいし、抵抗があります。別に残らなくても、あぁよかったなぁ、とか、あぁ歌っていたなぁ、というようにさり気なくていいんです。

自分からも「聴きなさい」というのは苦手。これ見よがし、というものにしたくないんです。声でもって、一人の表現者になれたらいいな、と思っています。

■注目している歌手はいますか?

米国のルネ・フレミングと、バーバラ・ボニー。ルネはチャーミングなんですが、力強い声で歌います。彼女の声はリリコスピントです。もう一方のバーバラは、チャーミングだけれど、ボーイッシュ。美声だし、テクニシャンでもあります。

■今回、ステージを観に来られる方へのメッセージはありますか?

フランスの歌は、メロディの分かり易い、綺麗なものが多いので、雰囲気を楽しんでいただいて、また聞きたいとか、綺麗だな、と耳馴染みになってもらえたら嬉しいと思います。また、オペラでは、役柄のイメージが全く違うので、その落差をお客様に見せられたらいいな、と思っています。


津山和代  Tsuyama Kazuyo Soprano

大阪音楽大学音楽学部声楽科卒業、同大学専攻科修了。東京音楽大学研究科オペラコース修了。同大学助手として2年間勤務、東京二期会オペラスタジオ修了。

二期会オペラスタジオ修了公演では『こうもり』のアデーレを演唱。関西二期会『アンバートヘリング』ミス・ワーズワースでデビュー。その後『ラインの黄金』フライア、『椿姫』のタイトルロール、『ラ・ボエーム』ミミ、『フィガロの結婚』伯爵夫人、『ドン・ジョヴァンニ』ドンナ・アンナ、『こうもり』ロザリンデなどオペラを中心に多彩な役柄を好演する一方で、宗教曲のソロ、NHK-FM録音など幅広く活動を行っている。

南米チリ国際音楽コンクール第二位受賞。二期会オペラスタジオ優秀賞。東京文化会館推薦オーディション合格。

現在、同志社女子大学、堺女子短期大学講師。関西二期会会員、京都フランス歌曲協会会員、堺シティーオペラ会員。